野鳥観察のための双眼鏡の選び方(初心者向けの実践編)
◆ 野鳥観察、バードウォッチングにおすすめな双眼鏡
タイトルにあるように双眼鏡選びの実践編です。
では、まず最初に一番重要なことから。
双眼鏡がたくさんあるお店に行き、主流とされる8x32(8x30)の色々な機種を手にとって比べてみてください。
これ、物凄く重要です。
双眼鏡の商品ページには倍率やレンズ径だけでなく、実視界や見掛け視界、コーティングの種類やその他セールスポイントが紹介されていますが、実際に覗いてみるとまた違います。重さの感覚やアイレリーフの長さだけでなく、微妙なクリアさの差異などは、実際に覗いてみなければわかりません。
そして何より、自分自身の好みを確認できます。
覗く時の注意として、目幅調整と視度調整を行ってください。
下記ページが参考になります。
● Nikon Sport Optics | 双眼鏡の使い方 | CF方式の各部名称と使い方
これらのことをせずに双眼鏡を覗き込んでも、見え味の良さはわかりません。(前の人が使った視度のまま覗き込んでも、合わないメガネをかけているのと同じことで、どこかピントが合いません)
8x32(あるいは8x30)をいくつか覗いてみて、大丈夫そうならそのまま8x32の中でお探しください。
その上で──。
【本体に関するあれこれ】
・8x32よりも軽いほうが良いなら8x21や8x25などのコンパクト機を。
・手ブレが気になるのであれば、5倍や6倍のものを。
・重たくてもより見えるのが欲しいのであれば、8x42を中心にお探しください。
・倍率が高い方が良いと思って、10倍や12倍を買うのはオススメしません。20倍や30倍のズームなんてもっての他です。一般的に、手持ちの限界と言われる10倍ですら、慣れた人以外は、手ブレでうまく見えません。6倍から8倍が最初に買うべき倍率です。
・ダハ型は軽くコンパクトになりますが、ポロ型の1.5倍、あるいは倍以上の価格を出さないと見え味は同じになりません。(安くて見え味の良いものを探しているならポロ型をオススメします。ただしポロ型は大きくかつ重いです)
・レンズ径の大きい方が明るく、かつ覗きやすいことが多いです。
・双眼鏡の見え味は、価格に比例します。基本的に同価格帯なら、メーカーが違っても同じ程度の見え味である場合がほとんどです。
【試し見に関するあれこれ】
〈外の景色〉
・双眼鏡を探す時、できれば双眼鏡コーナーから外の景色が見れるお店が良いです。
・建物の端や、電線を見たりして色収差の具合を確認してみてください。
・可能なら、昼と夜に行き、その両方で確かめてください。
・太陽は絶対に見ないでください!
〈室内〉
・室内を見る時は、あえてライトや強い光源を見てください。光源に負けて画面の一部が白くなる面積が大きいほど、光に弱い機種です。(ただし、目には悪いので、あまり長い時間見てはダメです)
・白い壁や白い文字を探してみてください。その双眼鏡に微妙な着色がある可能性があります。
・すごく大きなポップやすごく大きな案内表示などにある白抜きの文字を探して色々な双眼鏡でみてください。文字のふちに一切着色がなく、白い文字がクッキリ読めるなら良い双眼鏡です。
〈夕方や夜間〉
・夕方の試し見は重要です。覗くと暗い双眼鏡と、明るい双眼鏡があります。(基本的には、レンズ径の大きい双眼鏡の方が集光力があるため、明るくなります)
・夜に試し見しているときは、室内でもしたように強い光源を見てみたり、視界の端ギリギリ外に置いたりして、フレアやゴースト、その他収差を確認してみてください。(フレアやゴースト、その他収差についての説明はパナソニックのカメラのレンズ解説サイトになりますが、こちらがわかりやすいです)
● レンズの特性:フレア、ゴースト、収差(第十五回) | デジタルカメラ講座 | デジタルカメラ LUMIX(ルミックス) | お客様サポート | Panasonic
双眼鏡マニアたちのオススメを参考にするのも大切ですが、それよりも実際に双眼鏡を手にとって、自分に合うか否かを確認することも重要です。(といっても、微妙な差であり、どれを買っても合わないということはあまりありません。ただし私にも幾つか覗き込みにくい機種がありましたので、実機での確認は重要と言えば重要です)
大手のキュレーションサイト(おすすめ&情報まとめサイト)は見ては駄目です。綺麗なデザインでそれっぽいランキングとかにまとめ、検索上位に来ていたりしていますが、格安の料金で適当なライターを雇って無理に書かせているだけです。アマゾンや楽天で評価検索上位に来たやつを紹介しているだけで、このライター自分で買ってないんだな……と思われる内容がほとんどですので。(最近目についたのだと、sakidoriの記事がひどかったです。イヤホン部門も双眼鏡部門もアマゾンや楽天の人気上位をレビューから抜き出してきた感想で糊塗してるか、実用で役に立たない本体スペックを並べているだけ。なのに記事数が多く、デザインがいいので検索上位に来るんですよね……)
店頭で実際に試聴しても落とし穴があります。
双眼鏡は精密機械です。多くの人の手に取られる展示品の破損率は結構高いです。光軸がずれていたり、片方だけ見えにくかったりするものもそれなりの確率で出会います。また、双眼鏡の出来にも個体差があります。できれば複数のお店を回って……というのが確実なのですが、大都市圏に住んでいないと難しいですよね……。
近くにお店がない場合もあると思います。
現物を見ずに、鳥見の定番を購入されるのでしたら、Nikon モナーク 7 8x30かKowa BD32-8XD Prominarをオススメします。どちらも高品質な名機で、価格やブランドの好き嫌いで選んでしまっても大差はない……と思います。(大きな声では言えないのですが、購入はお店よりもネットのほうが安い場合が多いです)
これらは十万前後から十万オーバーする双眼鏡たち──欧州ハイエンド御三家(ライカ、ツァイス、スワロフスキー)や国産ハイエンド(Nikon EDGやKowa Genesis)と比較しても、そこまで劣るわけではないのに、現在の売価は半分以下というハイコストパフォーマンスな双眼鏡たちです。
最初からしっかり良いものを買っておこう、という方にはオススメしたいです。(私は基本的にベランダ派で、天体観測もするため、少し重くなりますが42mm級のKowa BD42-8XD Prominarを買いました。ほんっと良い双眼鏡ですよ!)
Nikon モナーク 7を検討される場合は、カスタマーレビュー(Nikon モナーク 7)が参考になります。気になるレンズ径や倍率のものを選んで読むと、その機種の評価や欠点が把握できますので。
Nikon 双眼鏡 モナーク7 8×30 ダハプリズム式 8倍30口径 MONARCH 7 8X30
- 出版社/メーカー: ニコン
- 発売日: 2013/09/19
- メディア: Camera
以下、おすすめ機種とそのコメントです。
■ 双眼鏡初心者向け双眼鏡(低価格)
◇ 8x21(ポロ)
・Pentax UCF R 8x21 : 長い間双眼鏡入門としての定番機として紹介されてきた機種。以前は五千円前後で売られていたが、後継機が出たことにより今や四千円前後。双眼鏡がどんなものかを知りたい方にオススメ。見え味もなかなかに良い。ただし、暗い場所や夜に弱い。また非防水であるため、雨天の使用は禁物。暗い所に弱いと、例えば山で鳥を探す場合、暗い木々の間は見づらい。防水でないと、突然の雨に対応できない。また、強い光源を見るとフレアが結構出るため、夜間の使用は辛い。昼に家のベランダから雀やヒヨドリなどを見るとかなら大丈夫だが、山や森に入るならサイズを上げて防水タイプにしたほうが良さそう。
PENTAX 双眼鏡 タンクローR ポロプリズム・センターフォーカス式 8倍21mm有効径 8×21UCF R 62209
- 出版社/メーカー: ペンタックス
- メディア: Camera
・PENTAX UP 8x21 : 先に紹介したPENTAX UCF R 8x21の後継機。ペンタックスが公開しているグラフを見ると、UCF R 8x21よりも数%から十パーセントちかくも見えやすくなっているらしい。モニターの彩度や明るさを数%変えると結構違って見えるのと一緒で、双眼鏡における数%の差は意外に違ってくると思うので、可能ならこちらを。と言っても、もう少し額を足せばこのブログイチオシのKowa YF30-8が買えるので、そちらを買ってしまうのも有り。
PENTAX 双眼鏡 UP 8×21 ピンク ポロプリズム 8倍 有効径21mm 61803
- 出版社/メーカー: ペンタックス
- 発売日: 2015/02/13
- メディア: Camera
■ バードウォッチング向けの双眼鏡(8x30、8x32)
◇ 8x30、8x32(ポロ)
・Kowa YF30-8 : 鳥見入門としての定番機。一万円以下で探すなら、コストパフォーマンスは最高クラス。防水ありのポロ型。なのにYF30-8は今や一万円を大きく切っている。一万円以下の予算で迷ったらこれを買うべし。弱点はポロ型ゆえの大きさ。逆光への弱さ。コンパクト機や軽量ダハ機よりも少しかさばること。
Kowa 双眼鏡 ポロプリズム式 8倍30口径 YF8x30 YF30-8
- 出版社/メーカー: コーワ
- 発売日: 2013/09/24
- メディア: Camera
・Kenko プロフィールド 7x32 : 一万円以下の中ではトップクラスの見え味を誇る傑作機。BK7プリズムにマルチコートという、本来ならよくはないスペックにもかかわらず、像がきりりとしていて、しかも広視界。明確にこれ以上の見え方を求めるなら、ポロ型なら二万円以上の機種、ダハ型なら三万から四万クラスのEDガラス使用機の中から探さなければならないほど。低価格ポロ型の名機KowaYF30-8と比べても、見え味でほんの少し勝っている。Kowa YF30-8よりも重く、非防水なため、初めて買う人はYF30-8の方が良いが、二代目以降で使い分けを考えていたり、ベランダでの使用がメインな方にオススメ。
Kenko 双眼鏡 プロフィールド 7X32 ポロプリズム式 7倍 32口径 031599
- 出版社/メーカー: Kenko(ケンコー)
- 発売日: 2013/11/01
・Nikon E2 8x30 : 日本が誇る名機。鳥見双眼鏡における到達点の一つ。ひやかしに覗いて、その見え味と広い視野に感動して、そのまま買っちゃう人も多いとか。お店で一度は覗いて欲しい双眼鏡。あえて弱点を述べるなら、非防水なのと、若干逆光に弱いこと。細かく言えば見口の作りやアイレリーフの短さなどもあるが、他は素晴らしすぎる双眼鏡。ポロ型のキリッとした見え味が好き人に特にオススメ。カスタマーレビュー(NIKON E2 8x30)に熱いレビューが多く投稿されている。私も欲しい欲しいと思い続け、結果、買っちゃいました! 見え味&広視界が素晴らしすぎて、防水が無いことを除けば、ほんっと凄い機種です! コスパもものすごく高く、十万円以上するダハ型ハイエンド並の見え味を、数万円で買えるわけですから!
Nikon 双眼鏡 E IIシリーズ 8X30E2 CF WF ポロプリズム式 8倍30口径 8X30E2N (日本製)
- 出版社/メーカー: ニコン
- 発売日: 1999/11/16
- メディア: Camera
◇ 8x30、8x32(ダハ)
・Kowa SV32-8 : コーワが出したダハ型のエントリー機。二万円を少し切った時でも、二万円以下では一番優秀という紹介をされていたが、今や一万五千円前後。見え味は値段からすれば十分で、クリアですっきり。コストパフォーマンスに優れる。ただ……正直な所、大きさを気にしないならYF30-8の方がお財布への負担的に良さそう。
Kowa 双眼鏡 ダハプリズム式 8倍32口径 SV8x32 SV32-8
- 出版社/メーカー: コーワ
- 発売日: 2013/09/24
- メディア: Camera
・Kowa BD 32-8XD Prominar : バーダーに人気なKOWA BDシリーズの最新版。コーワの象徴とも言えるPROMINARの名前が付いているのもポイント。それくらい自信のある商品ということ。迷ったら買っておけば大丈夫な超定番機。EDガラス使用機。私が持っているのは42mmのやつですが、むちゃくちゃ良いですよ!
Kowa 双眼鏡 ダハプリズム式 8倍32口径 完全防水 BD32-8XD PROMINAR
- 出版社/メーカー: コーワ
- 発売日: 2014/10/24
- メディア: Camera
・Nikon モナーク 7 8x30 : 同じく迷ったら買っておけば大丈夫な超定番機。ニコンのミドルクラスのエース。クリアな像が素晴らしく、文句がつけられない。先に紹介したBD32-8XDと並んで人気がある。8x32ダハ型の中では相当に軽く小さな機種のうちの一つで、さすがはニコン……よくここまで小さい機体と見え味を両立させたなあ……と思えるほど。EDガラス使用機。
Nikon 双眼鏡 モナーク7 8×30 ダハプリズム式 8倍30口径 MONARCH 7 8X30
- 出版社/メーカー: ニコン
- 発売日: 2013/09/19
- メディア: Camera
■ バードウォッチング向けのコンパクトな双眼鏡(8x25、8x24)
◇ 8x25(ダハ)
・Kowa BD25-8 : 日本製。一万円から二万円で買える25mm級ダハ型ではトップクラスの見え味。可能なら店頭で32mmのものと、見え味と重さを比べて欲しい。この価格帯になると光学的にかなりしっかりしているようで、夜の使用でもフレアが少なく、スッキリ見える。防水コンパクト型を探している場合はニューアペックス 8x24がライバル。見え味優先ならこちらを。
Kowa 双眼鏡 ダハプリズム式 8倍25口径 BD8x25 BD25-8GR
- 出版社/メーカー: コーワ
- 発売日: 2013/09/24
- メディア: スポーツ用品
・Kowa SV25-8 : なぜか2016年12月に激安価格に! 今では五千円以下で手に入るようになった。慌てて購入したが、価格に対して充分すぎるほどよく見える。双眼鏡ってどんなものかなあ……と思う人が初めて買う双眼鏡として最高にオススメ。コスパ良すぎ。
Kowa 双眼鏡 ダハプリズム式 8倍25口径 完全防水 SV25-8
- 出版社/メーカー: コーワ
- 発売日: 2015/03/26
■ その他、低倍率機や特殊用途のおすすめ
・Kowa YF30-6 : オススメ機であるYF30-8と違い、こちらは倍率が6倍。8倍機であるYF30-8は鳥見の入門機として定番だが、使いやすさからこの6倍機を選ぶ人も多い。後にたくさんの双眼鏡を集め始めても、6倍は使い分けができるのがいい感じ。低倍率機は良いですよ!
Kowa 双眼鏡 ポロプリズム式 6倍30口径 YF6x30 YF30-6
- 出版社/メーカー: コーワ
- 発売日: 2013/09/24
・Pentax Papilio II 6.5x21 : 庭の小鳥を見たいなら超オススメ!(と言うか他の双眼鏡だと、庭を見るには近すぎて焦点が合わないことがあるので注意) 鳥見に用途をしぼらなくても、自然観察や散策を含めるならば一番オススメしたい双眼鏡。近くに焦点が合うため、庭の小鳥だけでなく、博物館や美術館といった展示会でも大活躍する。個人的には、「双眼鏡」の中で一番良い買い物だったと思っている逸品。いろいろな人に使って欲しい。近くのものを拡大して見れる楽しさを味わって欲しい。カスタマーレビュー(Pentax Papilio II 6.5x21)にたくさんの使用例がレビューとともに投稿されている。なお、8.5倍よりも6.5倍機の方がオススメ。理由は、6.5倍機の方が明るいため。
PENTAX 双眼鏡 PAPILIOII6.5×21 ポロプリズム 6.5倍 有効径21mm 62001
- 出版社/メーカー: ペンタックス
- 発売日: 2015/02/13
- メディア: エレクトロニクス
・Sightron Safari 5x20 : クリアで広い視界を持ちながら、最短合焦距離が短いため、庭に来る鳥を見るのが得意。また鳥を探すときや、カメラの人には撮影前の導入に便利。低倍率で手ブレが少ないため、初心者の人にも凄く良い。動物園や植物園で大活躍する機種。2016年の終わりごろまで8000円くらいで売られていたが、今や5000円台のお得価格で手に入るのが嬉しい。
SIGHTRON 双眼鏡 ポロプリズム 5倍20mm口径 SAFARI 5×20 ワインレッド SAB021RD
- 出版社/メーカー: サイトロンジャパン
2017年02月追記。
動物園向けの双眼鏡に関しては、今回改めて現地で比較調査し、別記事にまとめてみました。参考にしていただけると幸いです。
・Sightron SI 5x25 SWA : 覗き込めば広い視界が見える超広角双眼鏡。普通の双眼鏡は「もの」を見るが、超広角双眼鏡は「景色」を眺めることができる。スポーツ観戦やコンサートに相性が良いだけでなく、山からの遠景など、一般的な双眼鏡とは違った感動をもらえる。強い光源には弱く、夜の使用は若干難しいが、鳥を最初に探す導入や、鳥を含めた自然を見るのに大活躍。超広角双眼鏡だけが見れる素敵な世界へようこそ!
SIGHTRON 双眼鏡 ダハプリズム5倍25mm口径 スーパーワイドアングル SI525SWA SIB63-0551
- 出版社/メーカー: サイトロンジャパン
- メディア: Camera
■ 野鳥観察のための双眼鏡、おすすめのまとめ
色々書いてはきましたが、あなたが選んだ双眼鏡が最高の双眼鏡です。
末永く使ってやってくださいませ。
■ おまけ : おすすめの野鳥図鑑
野鳥を見て、どの鳥かを見分けるオススメの野鳥図鑑はずばりこちら。
カスタマーレビューの凄く高い平均点につられて買ってみましたが、評価されている理由がわかります。
すごくわかりやすいのですよ!
実際の写真に注釈が描かれており、どうやって見分けるかのポイントが書かれています。
ちなみに本はこんな感じ。(基本は一ページに一つの紹介ですが、時々次の画像のシジュウカラのように二ページにわたっての解説となります)
鳥類学部門でベストセラー1位になっている理由もわかります。
見やすいですし、初心者向けですし。
綺麗でたくさんの鳥が収録されてますし!